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欧州チャンピオンズリーグで活躍できる選手を目指しドイツへ渡る ~JGFA第1期生の新たなる挑戦!!~

(文・山本浩之)

 

 2月も中頃を過ぎたある昼下がりのことです。日独フットボール・アカデミー(以下、JGFA)の西松文章代表からこんな連絡がありました。

 

「OBの横山奏大(よこやまかなた)君がドイツへ旅立ちます。準備を進めてきた現地のサッカークラブに入団するためです。今度の練習日にご両親と一緒に挨拶に来てくれることになりました

 

 この4月で高校2年生になる奏大君はJGFAの1期生です。ジュニアからジュニアユースを卒業するまでの4年間をJGFAで過ごしました。その奏大君がドイツにサッカー留学をするというのです。これまで奏大君には何回か取材する機会がありました。
約一年半前にはJGFA公式サイト向けに「夢に向かっての挑戦!!」というタイトルのインタビュー記事を書きました。そのとき「中学卒業後の進路として海外留学が選択肢にある」と聞いたのですが、まだ具体的には決まっていなかったようでした。だから留学することになったと聞いて、進路決定の経緯など、“それから”の話を聞いてみたかったのです。

 

――2月17日(木曜日)、ドイツへの出発を翌々日に控えた奏大君はジュニアユースの練習に顔を出してくれました。
■厳しくてもサッカーに集中できる環境に身を置きたかった

 

「中学3年生になってから、現実的な進路の選択肢として日本国内の高校サッカー部やクラブチームなどがあり迷っていました。ドイツ留学はシュタコーチ(シュタルフ悠紀リヒャルト・アカデミーダイレクター)が提案してくれました。

 

 やはり留学のチャンスがあれば挑戦したかったんです。そう思うようになったのは、JGFAに入って海外のチームと練習や試合をする機会があり刺激を受けたからです。彼らともっと競争して向上したいという気持ちが強くなっていました。ただ、まだ先になるのかなと思っていたので、まさか高校生のうちに実現するとは思いませんでした」

 

 留学先のDFI(Deutsches Fussball Internat:ドイチェス・フスバル・インテルナート)はバイエルン州の州都ミュンヘンの南に位置するバート・アイブリング市にあります。2011年に開校した寮制・通学制の育成組織で、奏大君のような留学生はインテルナート(寄宿舎)で暮らします。
敷地内にある提携先の学校で学業に励みながら、サッカーのトレーニングは設備が整ったインフラストラクチャー(施設)で専任のプロフェッショナルコーチの指導を受けることができます
DFIの公式サイトは日本語にも対応しています。

 

DFI(Deutsches Fussball Internat:ドイチェス・フスバル・インテルナート)
公式サイトURL:Persönlichkeit-jp (deutschesfussballinternat.com)

 

寄宿舎では洗濯や食事など生活の面倒をすべて見てもらえるので、余計なことに時間が割かれることはありません。(アルプスが一望できる)自然豊かな場所にあってサッカーに集中できる環境が整っています。それがDFIへの留学を決めた理由です。ただいくら環境が良いといっても、ドイツに行くのは自分ひとりです。生活面で困ったことがあっても、自宅にいるときのように、親がすぐそばで助けてくれるわけではありません。甘えることのできない環境ですから自分に厳しくしたいと思います

 

 当初の予定では高校1年生(2021年)の9月には留学できるはずでしたが、コロナウイルスの影響で渡航できず、4月から県内の公立高校に通っていたといいます。そのあいだサッカーはというと、3月にJGFAのジュニアユースを卒団してから今年の2月まで、Jリーグ(J3)・Y.S.C.C.のユースチームに所属していました。

 

「(Y.S.C.C.は)短かったけれど濃い時間を過ごすことができました。友達もできて、いろんなチームとの練習試合や公式戦を経験させてもらいました。本当だったら今年2年生になって後輩もできるので、チームを引っ張っていくような存在になりたかったのですが、(Y.S.C.C.に未練はとの問いに)そこはしょうがないというか、やっぱり海外に行きたい気持ちの方が大きかったですね」

 

 DFIの在校生は国籍が様々です。いろいろな国の人が友達になります。地元のドイツ人を中心にアジア人も多く、インド、タイ、中国人がいます。けれども日本人はひとりもいません。日本からの留学生は奏大君が初めてなのです。

 

「言葉は通じなくても、いまはスマホの翻訳アプリがあるので大丈夫です。自分からどんどん話しかけてコミュニケーションをとるようにします。積極的に行きたいですね。学校ではドイツ語を学ぶことから始まるんです。入学して最初のうちは普通科の高校のような(数学などの)授業がないので勉強が遅れてしまう不安もありますけれど、ドイツで生活するためにドイツ語を覚えることが先決です」

 

■ドイツで描くロードマップは?

 

 ここまでで、過去に奏大君を取材してから現在に至るまでの“それから”の話は終わりです。ここからは現在から未来までの“これから”の話を聞いてみました。

 

 奏大君の目標は欧州チャンピオンズリーグへの出場です。その目標を達成するまでのロードマップとして、日本にいれば、ユースからトップチームへの昇格、あるいは大学に進学し卒業後にJリーガーを目指すなど、まず日本国内でプロサッカー選手になるためのプランが思い浮かびます。ドイツに留学することになって、今後のプランニングはどのようになっているのでしょうか。奏大君はこのように答えてくれました。

 

「最初の目標はDFIで試合に出ることです。DFIはトップチームがありませんので、他のクラブにスカウトされるようなプレーをしてチャンスを狙います。移籍先でトップチームにあがって、将来的にはチャンピオンズリーグに出場するのが目標です。DFIで活躍してチャンピオンズリーグに出られるようなチームに移籍をし、そこでスタメンを勝ち取るというプランですね」

 

 DFIの生徒はDFIバート・アイブリング(DFI Bad Aibling e.V.)というチームに所属してトレーニングを行いますが、生徒によってはFCバイエルン・ミュンヘンといったブンデスリーガの強豪をはじめ、ミュンヘン近郊のクラブチームなどにも籍を置いているようです。

 

「これから先は(サッカーのプレーの面で)うまくいかないこともあると思います。そんなときは将来の目標を思い出して気持ちを前向きにするようにします。僕はこれまでも“自分に負けない”という言葉を胸にサッカーに取り組んできました。きついことがあると、妥協してしまったり、挫けたりしそうになることもあるでしょう。でも、そこで踏みとどまって自分に勝てなければ、自分の目指す場所に到達することはできません。辛いときほど『将来どうなりたいのか?』と想像して、気持ちがめげないようにします」

 

 奏大君はドイツでの留学期間は決めていません。いまのところ、夏休み、クリスマス、年末年始にも帰国する予定はないそうです。

 

「さっき話をしたようなステップアップが希望ですから、日本に帰ることは考えていません。とはいえ、何があるかわからない世の中です。急に帰国しないといけないような事態があるかもしれません。だからこそドイツでは一日たりとも無駄にできないという気持ちが強いですね。それが応援してくれる両親に対しての応えのひとつになると思います」

 

 そう奏大君は言うと「いまは(ひとりで日本を離れることの)怖さはあまり感じないですね。ワクワクというか楽しみの方が全然強いです!」と話を締めくくりました。

 

■現地で困ったときの頼もしい味方~ドイツ在住のJGFAのコーチングスタッフ

 

――さて、2月19日(土曜日)になって、JGFAの西松文章代表から「奏大君をご両親と一緒に羽田から見送りました」と連絡がありました。LINEには奏大君の写真が添えられていました。羽田空港の国際線ターミナルは思っていたよりは渡航者がいたそうですが、にぎわいはなくシーンと静まっていたのだと西松代表。奏大君を見送るときにかけた言葉を教えてくれました。

 

「大人でもひとりで外国に行くのは緊張するし不安に感じるもの。私も初めてアメリカやフランスにひとりで行ったとき、とても不安だった。だから、奏大のドイツ行きはすごいチャレンジだと思う。もし何か困ったことがあったら、ドイツにはJGFAのコーチングスタッフがいるからね。シュタルフ浩大トーマスコーチがいるし、今年の夏にはゼルナ早人コーチも行くから、遠慮なく彼らに頼ってほしい」

 

 奏大君は、西松代表から贈られた言葉に黙って大きくうなずいたといいます。日付が20日に変わって深夜0時50分、奏大君を乗せた航空機は羽田空港を離陸しました。“欧州チャンピオンズリーグ出場”という目標を達成するための新しい第一歩のスタートです。眼下に広がる東京の夜景をどんな思いで見つめていたのでしょうか。次に奏大君と会ったときは“そこから”話を聞いてみることにしましょう。

 

<了>

 

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